第20章 本音
途端に繋いでいた手をサッと解いてしまった。
そんな自分が物凄くみっともなくて、恥ずかしくて。
だってこんなの浮気がバレた修羅場と変わらない気がして。
赤井さんにも零にも申し訳ない気持ちになる。
その赤い車から降りて来たのは間違いなく赤井さんであって。
毎日会いたくて堪らなかった人が居るというのに直ぐに喜ぶ事が出来ない
それに変装もしてないし、赤井さんにはもう一台車があった事も知らなかった。沖矢昴として乗るあのレトロな車だけだと思っていたから…
車から降りた赤井さんが一歩ずつ近付いてくる度に、心臓の鼓動が聞こえてしまうのでは無いかと言うぐらいに煩くて。
赤井さんはいつもポーカーフェイスだからこそ、今も変わらず真顔で
怒っていると思えばそう見えるしそうじゃないと思えば違くも見える。
恐らく手を繋いでいた所も見られただろう…
「安室君、みなみが世話になったな」
直ぐ傍に来た赤井さんは、相変わらずいつもと変わらない口調だけど
どこか少し強くも感じる
「僕がそうしたいからしたまでだ。勘違いするなと言っただろ」
そう言いながら、離れた筈の手が赤井さんの目の前で零に繋がれて。
赤井さんの視線が繋がれた手に移る
解こうとすれば零が傷付くし解かなければ赤井さんが傷付いてしまう。
どこまでも穢い自分の感情に時々嫌気が差す。
「そうか。だがみなみが無事なのは君のおかげだよ、あらためて礼を言うとしよう」
「そんないつまでも平然を装っていられると思うなよ、赤井」
「そいつはどうかな。それは君の方なんじゃないか?安室君、その手を離してやってくれないか」
赤井さんのその言葉に、更に手に力が込められるのを感じた
痛いぐらいに。
『あ、むろさん…』
ハッとした零が手を離してくれて「みなみさん、ごめん」とまた謝罪をされれば自分の中の穢い罪悪感が積もっていくばかりで。
「さっきも言った筈だが、あまり人の女にちょっかいを出さないでくれるか。こちらとしても、あまり良い気では無いのでね」
さっき?この二人はさっきも会っていたの?
罪悪感や疑問やらでいっぱいになってると、今度は赤井さんに手を引かれて
今は零と向かい合う様な形になった