第19章 悪夢からの解放
時計を見ればもう23時前で。
「…送っていくよ」
『うん、ありがとう』
軽々しく荷物を持ってくれて、手を繋いで部屋を出ると
外に公安の人はもう居なくなっていた。
エレベーターに乗ると繋いでいる手が少し強く握られて。
「みなみさん」
『ん?』
「…赤井と一緒に居るなら大丈夫かもしれないが、本当に気をつけてくれよ」
『ん、うん…』
「みなみさんを殺した事にしたとはいえ、もしかしたら僕を疑っているかもしれないから」
『そう、だね…』
その言葉に一瞬で自分の置かれている立場というものを改めて認識すると、休まる事は無いのだと実感する
でも正直あのウォッカなら…と思う所もあるけどジンに知られているとしたら…
そう考えると油断は禁物でしかない。
「みなみさん、こんな事になってごめん」
『え、零が謝る事なんて無いって!色々してくれて本当にありがとう』
こんな言葉しか掛ける事が出来ないけど、曇っていた零の表情は少し明るくなり、だけどやっぱりどこか儚げでもあって。
そんな零に腕を引かれ、腕の中に包まれて顔を上げれば必然的に唇が重なる
「本当は帰したくないよ」
『零…』
自分の置かれている立場に再度複雑な気持ちになって。
上手く言葉が出てこなくなった所に、タイミング良く地下へと到着したエレベーターの音が響き渡る。
エレベーターに救われる時が来るとは思わなかったけど。
「冗談さ」
冗談なんかじゃない事ぐらい、私にだって分かってる。
でも私には赤井さんが居て、赤井さんを離したくなんてない。
それだけで十分なのに零の事も離したくは無くて。
『…行こっか』
ズンと重くなった気持ちを抱えながらも、ホテルを出て零の車がある地下駐車場内を歩き出す。
広い駐車場内は多くもなく、少なくも無いぐらいの車が止まっている
どんな言葉を発するべきか。そんなださい事を頭に浮かべ、下を見ながら進んで行くと突然零の動きが止まる。
『零?』
視線を零に合わせれば、怒りを感じさせる表情で。
前を見ると少し離れた場所に赤に白い線が入った車が止まっている
中には人が居るだけは見えるけど、顔までは見えなくて。
「赤井…!」
『えっ?』
零のその言葉で途端にゾワゾワと、そして心臓が飛び出そうな感覚になる
本来なら喜べる事なのに、今は違う