第19章 悪夢からの解放
さん……みなみ…さん…みなみさん
遠くから聞こえてくる名前を呼ぶ声によって目が覚めた。
『!零…!』
「良かった…みなみさん。もう大丈夫だ」
『こ、ここは…?』
ベッドの上から辺りを見渡すと、恐らくホテルの中でもう海は見えず
窓からは夕陽が沈み始めていて、物凄く久々に外の空気を感じる
「もう八丈島からは離れてここは都内の安全な場所だよ」
『そっ…か』
今の状況が夢みたいで、零が目の前に居る事ももう組織の人間が居ない安心感で視界がぼやける
「みなみさん…」
ベッドの隣に座る、どこか悲しげな表情をした零に抱き締められる
『うっ……れ、れい……』
零の体温に包まれると、これは現実なんだと漸く察知する事が出来て
今度は安堵の気持ちで涙が溢れる
「みなみさん、本当に無事で良かった。早く行けなくてごめんな…」
『うっ…ううん 助けに来てくれて…ありがとう、本当に…』
「当然さ」
『もう、諦めてたり…してた…』
「みなみさん…」
自分の彼女がこんな状態になっているというのも赤井は知る由もないのだろう
僕よりあいつの方がみなみさんを見る余裕がある癖に、お前はそれで良いのか?
相変わらず腹が立つ。
こんな大きなアザまで作って…
「そうだ、みなみさんの荷物持ってきたよ」
『ありがとう…』
腕が離れて、バッグを持ってきてくれる零。
「全く。こんなに色々付けられて」
『あー……んまあ……』
赤井さんに持たされたGPSと盗聴器の事を示している
「これは壊させて貰ったよ」
『うん…』
盗聴器とGPSを壊したという言葉に安心してしまった。
もし今赤井さんに聞かれていたら絶対に怪しまれてしまうから
そうだ…!スマホ
赤井さんなら拐われた事だって気付いてる筈だから、新しく送らないと
「みなみさん」
メッセージアプリを開き、沖矢さんとのトーク欄をタップしようとすると零に腕を掴まれる
「送る必要は無い。どうせ奴は知っている」
『そうだけど…』
「赤井は助けに来る事が出来なかった、そうだろう?自分の彼女が危険な目にあっていたと言うのに。もっと危機感を与えても良いんじゃないか?」
『でも、それは仕方が無いし…』
結局、スマホを取られてしまった