第18章 悪夢
「ん?ヘッ!どうやらシェリーが起きたみてえだ」
シェリー?シェリーってまさか…やっぱり哀ちゃんの正体がバレちゃったんだ…
「おい、お前今シェリーってワードにかなり反応したな」
哀ちゃんが拉致されているとされる部屋へ向かったウォッカと、つい反応を見せてしまった事で更に頬を掴む彼の手が強くなり、さっきより一段と顔が近付いていて。
「おい、いつまでそうやって泣いてるつもりだ?」
気付けば彼の手が濡れるぐらいには目尻から暖かい雫がダラダラと頬を伝っていて。
首を横に振る事しか出来なくて。
「ったく。俺の手を汚すんじゃねえよ!クソが」
舌打ちをしてそう言う彼は勢いよく手が離れ、立ち上がって濡れた手を振り払う。
「お前を今すぐ殺してやりてえとこだがよ、お前を差し出せば俺は憎くて堪らねえ奴を出し抜けんだよ」
『い、嫌…わ、私は何も無い……』
「何も無えって?まあ、確かにそうだな。お前はサツの一部でも無けりゃ、何処にも馴染む事が出来ねえ他所モンだもんなあ!んな所まで態々お前を助け出すなんて事も無えだろうな」
馬鹿にするように鼻で笑いながら言われて、そんなの挑発と同じ様な物なのに、今まで歩んできた人生の記憶と共に更に涙も溢れ出す。
『…そ、そんなの…貴方には分からないっ…』
「ああ?」
『貴方に…何が分かるっていうの……あんな理由だけで…こんな事して…』
「てめえ…相変わらず口は割らねえ癖にどうでも良い事だけは話すんだな」
『いや……来ないで…っ』
近寄ってきた彼がベットまで来ると腕を掴んで乱暴に組み敷かれる。
手足の拘束で身動きが取れない中、馬乗りになって上から見下ろしてくる彼の顔は笑っているけど、彼の向ける笑顔は純粋なものなんかでは無い事を知っているからこそ更に恐怖が押し寄せる
「おい、どうだよ今の気分はよ」
大きな手で肩から腕まで体重を掛けて、楽しそうにそう言われる
体格差のある彼が上に乗っているだけでも十分苦しいのに、更に痛みまでが増えて。
『っ…どうして…私が、何者だったら貴方達は喜ぶの?』
「はあ?フッ そうだな…世界中のカメラの精度は高ぇ。そんな中お前が突然現れた訳だからな、別の世界から来たとでも言いてえのか?」
『……もし、そうだと言ったら…?』