第18章 悪夢
でも声は男だし…
部屋の中に入ってきて、ウィッグと眼鏡を外すとやっぱりあの時自分を拐った男で。
「おい、お前どこのモンだ?」
ベッドに片足を乗せ、隅で縮まっている自分に少し前屈みになって覗き込む様にそう言われ。
『…な、何の話ですか…』
「恍けんなよ」
「最近突然お前が日本の防犯カメラに現れる様になって、世界中のカメラと過去の映像をハッキングしても何も見つかりはしねえみてえだな」
『そんなの…』
「あ?“そんなの”なんだよ」
『そ、そんなの…ぐ、偶然じゃないんですか?それに、どうして突然…』
まさかそんな所を見られているとは思わなくて。
ベルモットからの情報では無いって事?なら彼女はその事を話してないの?
「さあな。こいつが見つけたんだよ」
「こんな退屈な場所に潜んでた甲斐があったぜ、お前みてえなのが見つかってな!」
「ほら、さっさと吐いちまえよ」
『……知りません』
もしもこの二人に本当の事を話したとして信用する?
ふざけた事を言うなって殺されるかもしれないし、どう言ったら良いかが思い浮かばない。
「おい。何を隠してんだよ」
コーンロウの男に片手で頬を掴まれて、逸らしていた顔を無理やり前に向けられる。
端正な顔立ちに反して、彼の目の奥には光が無く、何かしら答えなければ彼は容赦なく殺してきそうで。
寒いぐらいに冷えきった部屋の中、顬と額からは冷たい汗が伝う。
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「潜水艦か…ライフルでは歯が立たないな」
「どうすればいい?」
「対処法はこちらで考える。みなみとその子の奪還は…」
「それはこっちで何とかするから赤井さんは潜水艦に専念して!」
「ああ、分かった」
「それと…」
「なんだ」
「ごめんなさい…赤井さん、この間みなみさんの事も成る可く目を離さない様にって言われたのに」
「気にするな、起こってしまった事は仕方がない。ボウヤは良くやってくれているぞ」
やはり奴らは海中か。
降谷君はみなみの事は耳に入っている筈だ。
さて、君ならどう出るかな
彼にみなみを任せる事など正直嫌に決まっているが、今はそんなことを言っている場合では無い。