第18章 悪夢
『んっ…』
少しの息苦しさと共に目を覚ました。
鉄製で出来た小さな部屋でベッドの上に手足を拘束されている。
二段ベットになっていて、この部屋には自分以外は居ない。
何時間眠っていたのだろう…拐われた時の事は鮮明に覚えていて今でも混乱してくる
哀ちゃんは何処に?
彼女もあの男によって拐われていたしこの外の何処かに居るはず。
にしても此処はどこなの?
八丈島の周りに廃墟みたいな場所はあった気がするけど廃墟にここまでの設備は無いだろうし…
連絡出来る物は持ってないし逃げるにも外には組織の人間が居るだろうし
何よりも怖くて。
仮に手足の拘束が外れたとしても、トリップしてきたからって戦える程の都合のいい能力なんて持ってもいないし。
不安と恐怖に苛まれる
思えば八丈島に行く事は赤井さんにあんなに止められていたのに
赤井さんが気を使ってOKしてくれただけであって。
気をつけていた筈だけどまさかあの瞬間を狙われるとは思ってもいなくて。今思えば全ての言動がフラグでしか無かった
これからどうしよう…
組織に目を付けられた原因は分かってる。でも本当にそんな事を全員信じるの?
拐われるまではとっても楽しかった。けど、家に居た方が安全だったな。
赤井さんにも心配を掛けてしまってるし、零から貰ったスマホの方は通知を確認出来てないし…
後悔混じりの大きな溜め息を着いていると、足音が止まりドアが開く。
「やっと目覚めたか」
開けたドアに腕を掛けながらそう話しかけてくるウォッカ。
あの組織のメンバーが自分に話しかけてくるのは恐怖でもあり、自分の置かれている現状がやばい事が更にじわじわと伝わってくる。
ベッドの隅に体を小さく折り曲げ、恐怖で答える事が難しい
左側からコツコツとヒールの音が聞こえてきて。
「ん?おい、その格好で来るんじゃねえよ。バレたら厄介だぞ」
「あ?うっせえな、んなもん殺しゃあ良いんだよ」
ドアの前に立つウォッカの隣には
重めの前髪にミディアムヘア、眼鏡を掛けて黒いジャケットの下にストライプのシャツと水色のタートルネックを着た女性?がやって来た。