第18章 悪夢
つい、ジッと見てしまったせいで視線を感じたのか確実に目が合った事だけは分かる。
ただ目が合っただけだと思いたいけど、ベルモットに知られてる訳だし
もし他のメンバー達にも知られていたら…
一瞬で脳内が混乱して、ズルズルと床に座り込む。
手に持っていたスマホは振動を起こしていて。
こんな事になっている間にもしあの二人が来たら…
そう考えると赤井さんからの着信に出る事も出来なくて、液晶に映る拒否のボタンだけは直ぐに押す事が出来た。
『もしかして、やばい、かも……』
もしスマホを組織の人間に取られて、過去のやり取り等を全て探られたら
赤井さんが生きているという事を疑われかねなくて。
電話に出る余裕も無い中、唯一今も繋がっている盗聴器にそう伝えて
GPSと共に外して、手を床に着いて竦む足を引き摺りながらバッグの中にスマホも一緒に閉まい、そのバッグをベッドの下に隠す。
電気を消してベッドの中に潜り込む。
波音だけが聞こえる部屋の中に足音が確実にこっちへ近付いてきていて。
早くに逃げようと思えば逃げれた筈なのに、恐怖で固まってしまってもう逃げられる状況では無い。
今居る2階の部屋は外から見ればそんなに高くは無いけど、実際に上から見るとここから外へ飛び降り、着地に失敗すれば怪我は間違いなさそうで。
だけど…やるしかない
音を立てないように布団から出ると近付いた足音は部屋の前で止まった。
鍵をしていてもそんなの直ぐに破られるだろうし、破ろうとしている間に窓を開けてさっさと下に降りた方が良い。
いざ、バルコニーに立つとまた足が竦んでしまって。
下を見ると思ったより高さはあるし、もし着地に失敗したら…
顬からひんやりと冷たい汗が頬から顎に伝う。
バルコニーの柵に両手を着いて、足を置こうとするとドアが開く音に心臓が止まりそうになる。
「おいおい、そっから逃げるってか?」
声のする方を振り向けば、サングラスを掛けて髪の毛を編み上げた黒いスーツの男に馬鹿にする様にそう言われて。
隣にはさっき一瞬目が合ったウォッカも居る。
震える体を何とか振り絞りながら逃げようとすれば近付いてきた黒いスーツの男にあっという間に体を拘束される。