第17章 鯨
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「それでこの人をどうするんです?」
「ここに入れて運ぶわよ。それと…」
トイレに居る女性エンジニアをベルモットが手刀で気絶させ、彼女が指を刺した先にある清掃カートまで運ぼうとすれば、どうやらまだ続きがある様で。
「何でしょう?」
「貴方が最近やけに深切にしているあの彼女」
「さあ?僕には親切にしなければいけない女性が多いので…誰の事だか」
突然の言葉に、つい動揺しそうになり途端に緊張感が走る。
やっぱり彼女はみなみさんに目を付けていたのか
だとすればあの時も…
「まあ良いわ。けど、程々にしなさいね」
そんなの分かっている。
みなみさんに極力連絡を控えているも、接触しないのも
危険に巻き込まない為であって、僕の唯一の癒しであるみなみさんに本当は物凄く会いたい。
「ええ。言われなくとも。それより早く運びましょう」
この女性の何処かに隠されているUSBはどうやらネックレスの様で。
「あら、可愛い」
奪ったUSBを持ち、潜水艦の薄暗い応接室へ。
「USBは手に入ったか?」
「ええ」
USBを挿したパソコンに表示される老若認証testの文字。
「画像ファイルみたいね」
ウォッカ、キールも共に見る中、妙な緊張感と共にダブルタップされ
やがてそこに現れた画面に目が釘付けになり、息を呑む。
「こいつは……!シェリー!」
「この子供…シェリーの子供時代かしら」
「いや違う。奥の奴の手元を見てみろ、最新の機種だぜ」
彼女はベルツリー急行にて僕の手で葬った筈なのに、この少女の姿はコナン君達と一緒に居る灰原哀と言う、やけに大人びた少女と瓜二つ。
…これはまずい。
「子供のナリになって生き残ってたんじゃ…!」
部屋を出たウォッカはジンに至急連絡をしに行ったのだろう。
幸い、みなみさんについては見つかっていない様だ。
だがベルモットに存在が知られているのは厄介でしかない。