第17章 鯨
そしてあっという間に1週間が過ぎ、いよいよ八丈島に行く日がやって来た
「みなみ、さっきも話したがこの二つを…」
『持ち歩くんですよね!大丈夫ですよ』
「ああ、そうだ」
GPSと盗聴器についてと移動をする度に連絡を入れる様、数日前から何度も言われていて…
凄く心配してくれているのは分かるけど、盗聴器まで必要なのかな?
GPSで明らかにおかしい場所に居て連絡も来ないならそれだけで何かがあったって分かる筈だと思うけど…
なんて事を考えながら持っていく荷物のチェックをしている
「忘れ物をしないようにな」
『はい!お土産は何が良いですか?』
「お前が無事に帰宅さえしてくれれば何も要らん」
『大丈夫ですよ、向こうで良さそうな物買ってきますね!』
今日赤井さんは外出をしないみたい。だけど急用が出来た場合直ぐに出られる様に沖矢さんの状態になっている。
少しでも休んで貰えると嬉しいな
「必要品は持ったか?」
『はい!』
この様子はまるで遠足に行く幼児を見守る親の様で…
それが何だか少し可笑しいけど嬉しくもあって。
最終チェックをしていると、外が賑やかになってきて。
「愈々だな」
『はい!』
玄関先までバッグを持ってくれて、一旦床に置くと直ぐに赤井さんの腕に包まれる。
赤井さんでは無く、沖矢さんの匂いに包まれて少し寂しくもなったり。
「みなみ、呉々も気をつけるんだぞ」
『はい。赤井さんも気をつけてくださいね?』
「ああ、勿論だ。…無事を祈る」
どこか寂しそうに聞こえる声とは裏腹に体を包む腕の力は普段よりも強くて。
体が離れると機械音と共に沖矢昴に変わり、またバッグを持ってくれて一緒に外に出る。
阿笠博士の家の前に、いつもの黄色い車と毛利さんのレンタカーが並んでいる。
「ちょっと〜?あんた達早くしなさいよ」
「あ!みなみお姉さんと昴お兄さんだ!」
「えっ?!昴さん?!」
博士の家から出てきた歩美ちゃんの声によって
車の後部座席に乗り、開いた窓に腕を掛けていた園子ちゃんが窓から一瞬で顔を出す様子は面白くて…