第13章 過去には
それ以降会話は無く、あっという間に工藤邸に着く。
普段なら門の前で降ろして貰ってから家に入っていくのを確認した後に駐車場へ車を置きに行く赤井さん。
だけど今日は止まる事無く一緒に駐車場へ行き、手を繋いで家まで向かう
正確に言うと、繋ぐというよりも大きな手で何倍もサイズの違う手を掴まれているけど。
中へ入り、手を握られたまま靴を脱いでリビングに入ると
袋をドサッと置き、サングラスと帽子をソファに投げて
繋がれた手を引かれ赤井さんの腕の中に包まれる。
今までより一段と強く、そして身体中に赤井さんの体温を感じて。
「みなみ…」
『あ、赤井さん……』
私の名前を呼ぶ赤井さんは今までに無いぐらい弱々しくて、変装もしていないし、きっとかなり心配させてしまったんだ。
「起きてお前が何処にも居ないし連絡も付かなかったから、本当に無事で何よりだ」
『赤井さん…ごめんなさい…勝手に、家を出て…』
赤井さんに優しくそう言われると、安心感からかまた涙が込み上げてきて。
「俺に気を遣ったんだろ?それはみなみの優しさだ、よく伝わったよ」
『うん…赤井さん、起きる前に…買い物行って、料理しようと思って…』
「ああ。感謝するよ」
言葉を詰まらせながら話すと、後頭部を優しく撫でてくれて、背中に回された手が優しくて。
『心配、かけて…ごめんなさい…』
「もう良いんだ」
抱き上げられて、そのまま階段を上がり、寝室のベッドに座って赤井さんの膝の上に乗せられる。
「だが、何があったのか聞かせてくれるか?」
あの出来事を赤井さんに話せる訳が無く。
『あ、あのね…突然、パニックに…なっちゃって……』
嘘をついた。
まあベルモットが去った後、あんな状態になったのは半分パニックに陥っていたと言っても過言ではない。
それにこの世界にやってきた理由もある程度知っている訳だし、そうなったとしても怪しまれないかと
「そうか…突然か?」
『は、はい…』