第13章 過去には
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“別世界”ね…
まさかとは思っていたけれど、世界中の防犯カメラを遡って探しても彼女の姿は見つからなかった。
見つかるようになったのはごく最近から
あのシステムが劣っているとは考えられないわ。
ボスが彼女のような人間を気に入るのは確実
だけど彼女の存在を知らせるも知らせないも全て私次第。
あの組織で這い上がりたい訳でも無ければ、正直言って彼女を拐いたい訳でも無い
強いて言うなら私自身の好奇心ってものかしら
ジンにバレなければ良いけれど
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ベルモットが去り、姿が見えなくなったと途端に体の力が抜けその場にしゃがみ込む。
両手に持っていた重いレジ袋が音を立てて地面に付くと
この暑さで冷蔵品は大量の結露で内側から袋に張り付き始めていて、傷んでしまうかもしれないというのに…
体は鉛の様に重くなっていて。
全てが辛くなって、額から流れる冷たい汗と共に視界はボヤけ
目からは涙が流れる。
こんな場所で泣いてる場合では無いのに、急ごうと思えば思う程目頭も目尻も熱くなって更に溢れ
危ない状況に置かれているのも分かっている筈なのに
こんな袋を持ったままで、彼女に言われた“居場所はここでは無い”と言う言葉がずっと脳内をグルグルとしていて。
この世界に来て、良くしてくれて、優しくしてくれる皆のお陰で自分の心が少しでも救われた気がしていたのに、あんな態とらしい一言なんかだけで
やっぱり何処にもそんな場所は無いのかと思えてきて。
室外機から出る温風に吹かれても、次から次へと流れ出てくる涙は渇く事を知らない。
白昼夢でも薄暗く、人が通る気配のない路地裏で声を殺しながら咽び泣く。
家を出てからどのくらいの時間が経っただろうか。
赤井さんはもう起きているのかな…
何も言わないまま出てきてしまった為、もし起きていたのならきっと怒られてしまう。
分かっている筈なのにどうして…
どうして、全てがこんな事になってしまうのだろうか。
悲歎に暮れ、スマホを確認する余裕すら無く
ひたすらに溢れ出る涙に呑まれてしまう。