第13章 過去には
黒髪ショートにシャツとパンツスタイルにピンヒール。
見た事の無い顔をしているけど、間違いない
この声はベルモットだ。
『あの…人違いじゃないですか?』
「あら、そうかしら?」
『どちら様ですか?』
「これでも同じ事が言えるかしら」
ペリペリと変装マスクを外すとサラサラとしたプラチナブロンドの髪の毛が躍る様にマスクの下から出てくる。
そして実際に目の前で見るベルモットは薄暗い路地でも分かるぐらいに美しくて…
『…し、知りません…』
「はいはい」
動揺している自分の姿は直ぐに見抜かれて。
『私に何か用ですか?』
「そうね、貴女に興味があるのよ」
『興味…?一体何なんですか?』
「それはこっちのセリフよ」
少し呆れた様子で煙草に火を付け、煙を吐き出した後
再度口を開く。
「小田島みなみ。これは貴女の偽名かしら?」
『それは…』
「貴女の住んでる事になっている部屋は空き部屋。そして彼と接触がある、どういう事かしら?」
『彼って…誰の事ですか?』
「惚けるのもいい加減にしなさい。貴女とバーボンの事よ」
『ここに越してきたばかりで、それで…ポアロで安室さんと仲良くなっただけです。その部屋は訳あって直ぐに退去しました』
「そうかしら?貴女の出生地はこの米花町と見たけれど」
『っ…それは』
「冗談よ。だけど貴女のその反応からして当たっている事は事実ね」
『…何が目的なんですか?』
「貴女の身分は偽物。そうなると身分を隠さなければいけない立場の警察関係者か、それよりもっと別の存在か」
『どちらでも無いです』
「バーボンは今も組織内で鼠を疑われているわ。もし前者の場合、バーボンは鼠と同等」
『貴女はつまり、そのバーボンについて探りたいのですか?』
「そうねえ…それもあるけど今は貴女についてよ」
『私…ですか』