第13章 過去には
どうやら毛利さんと蘭ちゃんが小さく話し合っていて…
あまり聞こえないけれど、この構図はよく作品内で見た事があるから
それを実際に目の前で見れるのは何だか嬉しい
勿論内緒だけどね…
「いやー申し訳ないですな!あまりの美しさについ、驚いてしまいまして」
「もう本当にうちの父がすみません…何かご迷惑とか掛けていないですか?」
『全然!大丈夫だよ』
「それなら良かったです…」
『気にしないで!蘭ちゃんと毛利さんはお出掛けですか?』
「これからコナン君の授業参観に行きます!…お父さんと!」
そう言いながら嫌そうな顔をする毛利さんの腕を強く引いてる蘭ちゃんを見て少し笑いそうになり…
『そうだったんだ!それは楽しみだね!』
「はい!」
『蘭ちゃんも毛利さんも会えて良かったです!お気をつけてくださいね!』
「私もです、またゆっくりお話しましょうね!みなみさんもお気をつけてください!」
「お、おお。それじゃあまた」
そうして、ブツブツと言っている毛利さんの腕を引っ張りながら歩いていく蘭ちゃんを見届けてまた歩き出す。
昨日の零の言葉を思い出す。
何だかそれだけでも救われた気がして
そして帰ったら赤井さんが待っていてくれて、大好きな人に何時でも会える
こんな幸せな事は無いなって。
心が少し暖かくなってくると同時にやっぱり物理的にも暑い…
雑居ビルやコンビニが並ぶ通りは日差しが強い為
少しでもそれを避けられる様な、且つ抜け道のような路地裏を見つけて。
まだ昼間だし真っ暗ではないからそこを通る事に。
まあ結局室外機とかもあって蒸し蒸しとするけれど…
直射日光よりはマシだ
半分ほど歩いていくと、煙草を吸っている人影を見つける。
他に人は居なく、突然緊張感が走る。
もしもここで襲われたりなんてしたらどうしようと。
戻って普通の通りで行けば良いだけなのに、疲れもあってつい…
とりあえず足早に通り抜けようと、手に持った袋が大きく擦れる音を立てながら人影へ近付くと、煙草の火を消しこちらへ歩いてくる。
良かった…
女性みたい。
恐らくこのビルの職員さんかな?
この世界なら安心は出来ないかもしれないけど、白昼堂々には流石に…
そう思い、突き進んでいく。
「ハイ、仔猫ちゃん」