第12章 不純に染まる夜
『わ〜綺麗!』
「みなみさんは夜景が好きだと思って」
『うん、大好き!ありがとう零』
大都会の並ぶ夜景を見ればさっきまで考えてた事は
やがて薄れていくような単純な脳の構造をしていて少し救われたり。
「そんなに喜んで貰えて僕も嬉しいよ」
気付けば後ろから、零の腕が首と胸の下に回されていて。
レースのワンピース越しにやっと零の体温を感じられる
『…零も嬉しいなら、私ももっと嬉しい』
こんなに喜ぶ姿を見れるのは純粋に嬉しいが、それは本心か?
演技には見えないが、だとすればみなみさんは赤井とはろくに外出が出来ていないのだろう。
まあ、今の赤井にそれは少し困難な話だけど。
みなみさんはこんなに直ぐ傍で。
嬉しそうに僕の腕の中に居るというのに、みなみさんは…
僕のものでは無い。
あの時は赤井に怯えた様子だったが、あれは内緒で僕に会っていたからであり、みなみさんも赤井もお互いを本気で思い合っているのか。
お前は僕からヒロだけでは無く、みなみさんまで…
僕の大事なものばかり奪っていくヤツの顔が頭を過ぎれば、このままみなみさんを赤井なんかが見つけられない様な所に隠したくなる。
こんな日々じゃみなみさんと十分に時間を取れないし、一人にさせてしまう事の方が多い。
僕に特定の女性を作る事は出来ない。
相手を危険に巻き込んでしまう可能性だってあるから。
そんな事分かっているさ。
だけど、みなみさんが欲しいよ。
『零…?苦しいよ〜』
零の抱きしめる力が徐々に強くなっていって。
零は今何を考えていたのだろう
夜景と共に薄らと反射する零の姿は
首元に顔を埋めていて、だけどやっぱり悲しげで。
「ああ、ごめん。つい」
『どうしたの?何だか今日は零らしくないというか…でも、私が原因でもあるよね。ごめんなさい』
「謝らないでくれ」
少し気概無く聞こえたその言葉からは、渦巻いていた私の心をまた掻き乱すかの様にじわじわと零の気持ちが伝わってきて。