第11章 渦巻く想い
「ご馳走様でした」
『ご馳走様でした。凄く美味しかった!』
「でしょ?良かった、みなみさんに喜んで貰えて」
またフワッと笑ってくれた事に安堵に包まれる。
お店を出て、また零と手を繋ぎながら車まで歩く。
街灯に照らされながら歩く夜道は、きっと傍から見たら恋人同士の様に見えるのだろう。
実際はそんなものでは無いのに…
それに赤井さんは何処にいるかも分からない。
もしもこんな所を見られたらと思うと怖くもなるけど、零との時間も捨てられなくて。
そんな事を思いながらパーキングに到着して車に乗り込む。
「みなみさん、どうかしたか?」
『え?いえ 何も。零、今日は本当にありがとう』
「みなみさんのその顔が見れて良かったよ」
零がまた手を繋いでくれて、車が走り出す。
この世界での土地勘があまり無い自分でも車の方向は米花町に向かっていないという事だけは分かる。
スマホを確認すると赤井さんからメッセージは届いていなかった。
もう21時を過ぎていて、あの時を思い出すともしGPSがついたままだとしたら…等と不安が過ぎってくる
「ん、どうした?」
『あ、ううん 何でもない』
信号待ちで、零の視線は私の手に持ったスマホに移っていて
今度は零と目が合えば口の端を少し上げながら、また視線を前に向け車を走らせる。
「心配する必要は無いよ、組織が忙しいと言っただろう?そうとなれば彼等も必然的に」
そんな事言われちゃ、まるで必死で浮気を隠す人間みたいじゃん…
まあ間違えてはいないんだろうけども。
だけど正直その言葉に救われたりもする
『そう、だね…』
「じゃなきゃみなみさんだって今日来れなかっただろう?」
『ん。まあ…』
「僕は今日会えて嬉しいよ。みなみさんは違うのか?」
『嬉しい… けど、』
「けど、なんだ?その続きも後で聞かせて貰うよ」
ホテルの地下駐車場に車を停車させてそう言う零。
車を降りて零に腰を抱かれながら中へ入り、部屋へ
そこはあの時みたいに綺麗な夜景が一望できる部屋で。