第11章 渦巻く想い
「みなみさん、お待たせ。乗って」
開けた窓の下に腕を乗せてそう言う零に従って助手席へ。
『お邪魔します…』
「どうぞ」
ベルトをすれば車が走り出して
『今日は…どこへ?』
「そうだな、お腹は空いている?」
そういえば今日はあまり食べる時間が無かったな。そう言われると途端に空いてくる
『あ、今めっちゃ空いてきたかも…』
「それなら良かった。和食と洋食どちらが良い?」
洋食の気分でもあるけど、零は和食が好きな筈だから…
『和食の気分!』
「了解」
横を見れば少し嬉しそうな零が居て、何だか自分も嬉しくなって。
零と最後に会った日からまだ全然経っていないのに、赤井さんとの日常が凄く濃いからこそ新鮮にも感じる
ここでもまた色んな緊張をしてしまって、何を話せばいいのか
頭が真っ白になりかける。
あの時以来なのに零はまだ何も聞いてこない。
どんな思いで今こうして会いに来てくれてるの?
『あの…零?』
「ん?」
『えっと…お疲れ様』
「ありがとう。今日ならみなみさんも都合が合うと思ってね」
『ま、まあ…』
「沖矢昴はなんと言っていたんだ?」
『用事があるみたいで…』
「良いよ。本当は分かっているんだろ?」
『え?』
「最近組織の方でも忙しいからね」
零ぐらいの人が沖矢さんの正体に気付いていない訳が無いよね
『忙しい中ありがとう、零』
「みなみさんとの時間は僕にとって特別だから」
そんなの事を言われたら…
揺らいでしまうのも仕方がない。赤井さんの事は勿論大好きだし
だけど零の事も…零の事も放っておけなくて。
束の間の休息なのに態々こうして会いに来てくれる事は
例えそれが都合のいい関係だとしても嬉しい。