第11章 渦巻く想い
そろそろ着くという通知を見て、合鍵で鍵を閉めて家の前で待つ。
勢いでここまで来たけど、そういえばこのスマホのGPSはまだ付いたままなの?それに赤井さんは何時に帰るかも分からない。
もしまた予想よりも早かったら?
こんな当たり前のような事を考えずにここまで来てしまった事に後悔に近い感情になる。
だけど零に会えるのは正直嬉しくて…
「おーみなみくん、久々じゃな」
ボケっと考えていたら、お買い物帰りであろう阿笠博士と哀ちゃんに遭遇して。
『お久しぶりです!こんばんは』
「こんばんは」
「ほほー、もしやデートじゃな?」
『えっ?!あ、まあ…』
「博士?アイス、溶けちゃうから冷やしてきて」
「お、おぉ…分かったよ哀くん。それじゃあみなみくんもまたのお」
『はい!』
何かを察したみたいで先に阿笠博士を中へ、家の前で哀ちゃんと二人になる
あの時、名前を呼んでくれて挨拶をしてくれたけどそれ以来だったから
やっぱり緊張する…
「こんな時間に女を一人で待たせるなんて、彼も飛んだ無礼者ね」
門に寄りかかりながら腕を組んでそう言う哀ちゃんは元の18歳よりも大人びて見える。
きっと沖矢さんだと思ってるんだよね…
どうしよう。とても言い難い。
自ら望んで外で待っていると伝えたら折角の哀ちゃんの言葉を折り曲げてしまうかもしれないし…
『今日はね、用事があって…沖矢さんでは無いんだよね』
「こんな時間から用事なんて、貴女も大変ね。彼は知っているの?居ないみたいだけど」
『えっ?あぁ…まあ…』
「心配しなくても、話すつもりは無いわよ」
『あ、ありがとうございます…』
遥かに、…遥かに?私の方が年上なのに哀ちゃんに気を遣わせてしまっている所が何とも恥ずかしいというか…
だけどこうして哀ちゃんとも話せる事が嬉しい。
街頭に照らされながら見覚えのある車がこっちへ向かってくる。
「あら、大胆ね。それじゃあまた」
『あ、ありがとう哀ちゃん!またね!』
そうして哀ちゃんは中へ入っていき、零の車が目の前まで到着した。
偶然とは言え哀ちゃんと話せたのも、車が来るまで居てくれたのも哀ちゃんの優しさを感じて嬉しくなる。