第11章 渦巻く想い
『…もしもし』
「こんばんは、みなみさん」
『こんばんは…』
せめて悟られない様に震える声を隠しながら話す。
「どうされたんですか?元気が無い様に感じますが…」
『い、いえ!寝起きなので…』
「へえ。寝起きにしては、やけに鼻声ですね」
やっぱり安室さんにも嘘は通用しないみたい。
『あ、えっと…それは…。どうかされたんですか?』
「今何をしているのか気になってね、もしかして一人かな?」
沖矢さんと一緒に住んでいると知った上でのこの電話は…
今沖矢さんが家を空けている事に気付いているのかな。
『ど、どうして分かるんですか?』
「彼の車を見かけたからね」
『そっ…か…まあ、一人、です』
「だね。今から迎えに行く、準備をして待ってて」
『えっ?いや、でも…』
「いいから。泣いている理由も聞かせて貰うよ、じゃあ今から向かう」
『えっ…ちょ』
返事をする間もなく通話を切られて
気付けば涙なんて引いていて、スマホを握ったままポカンとする。
取り敢えず準備をしなきゃ。
急いで鏡に向かい、軽くメイクを治して、幸い巻き髪はそこまで取れていなかったから部屋にバッグ等を取りに行く。
枕の下に隠しておいた零からのスマホを見ると夕方にメッセージが一件届いていて、内容は夜会えるかどうかのメッセージだった
まるで沖矢さんが夜に出掛けるのを知っているかの様で。
組織関連って言っていたし、潜入中の零からしたら動きも分かっているからこそFBIが動き出すタイミングも把握出来るって事?
そうなると零は沖矢さんの正体も気付いているのか…
一応零からのスマホもバッグに入れて、香水も掛けて
零が来る前に外で待っていないと。
香水は…あくまでも好きで掛けているけど、今の自分を客観的に見たら
何だか如何にもなぐらいで…
まあこれは浮気に入ってしまうのかもしれないけど…