第11章 渦巻く想い
『そうなんですね…気をつけてくださいね?』
「みなみもだぞ、何かあったら直ぐに連絡しろ」
『はい、気をつけます…』
荷物を持った赤井さんと立ち上がって、玄関へ向かう。
寝惚けているのか分からないけど、何だか凄く寂しい
だけどそんな事言えなくて。
沖矢昴になっているのに、赤井さんの様に見えてきて
もう行ってしまうのかと思うと突然視界がボヤけてくる。
幸いにも玄関の照明は控えめな為、きっとバレていない筈。
小さく深呼吸をして
『頑張ってくださいね!赤井さんの帰りを待ってますね』
「ああ。遅くなるから待たなくて良いぞ、気持ちだけ受け取るとしよう」
『分かりました…』
「行ってくるぞ」
『はい!行ってらっしゃいませ』
軽く触れるようなキスをして出ていった赤井さん。
この広い家の中で薄暗い中に一人残されると途端に寂しくなる。
赤井さんは今までそうなる事は無かったのかな
工藤夫妻も一時期は赤井さんと一緒に此処で住んでいたみたいだけど。
リビングに戻り、ソファに残された赤井さんのジャケットを抱えながら膝を立てて座る。
煙草と赤井さんの匂いがふわりと香り
また視界がボヤけ、頬に涙が伝う。
こうなる理由なんて無い筈なのに、そう思えば思う程溢れてきては頬を伝って行き。
鼻の奥に残る赤井さんの匂いが恋しくて。
ジャケットを抱えて一人泣き続ける。
少しだけ虚しい気持ちに包まれていると、テーブルに置いてあるスマホのバイブ音に視線を移す。
涙を拭いながら画面を見ると相手は零からで。
大きく深呼吸をして電話に出る。