第10章 深い繋がり
『ありがとうございます、少し暗く考えてました』
やっぱり赤井さんの言葉は重みが違うというか心から信頼できて。
「安心しろ、俺は何処へも行かん」
何やら深刻そうにしているかと思えばそういう事だったか
もう誰かを失くす事だけは御免だ。
それにみなみを離したくない。
出来る事ならあまり降谷君にも会って欲しくは無いが、こいつが望むなら出来る限り広く見てやりたい所だ。
二人がどんな心情なのかは分からんが、こいつの言葉を信じてやりたい。
優しく頭を撫でてくれる赤井さんの手は温かくて心地好い。
また更に赤井さんの思いが知れて嬉しいのもあって。
『そういえば、どうしてさっき突然沖矢さんになったのですか?』
あの話をした後ではこいつが少々、気持ち的にも混乱すると思ったからな。
それなら沖矢の姿の方が過ごし易いかと。
それに、沖矢の方が色々と自制心とやらが利く。
そう思ってはいたが、こいつの前だと危うくなる事が多々ある
本当はこんな変装を破りたい所だったがな。
「沖矢の方が好きだと思ってな」
『え〜、まあ…でも、両方好きです…』
そう言うとピッと変声機を触ってから無言でこっちを見つめる赤井さん。
どうもそれがじわじわと面白くて…
『でも…どちらも赤井さんな訳ですし…』
「そうだな、だが今の俺は全くの別人を装わねばならん。お前から見てちゃんと沖矢になれているか?」
『えっ?はい、勿論』
「そうか、それなら良い」
赤井さんがそんな事を聞いてくるとは思わなかった。
変装生活は遥かに大変だろう…
赤井さんと他愛も無い話をして穏やかな時間が過ぎていき、あっという間に夕方になっていた。
一緒に夕飯を作る事になり、とりあえガウンから着替える為に部屋へ。
ベッドの上に置いたバッグをふと見ると中にスマホが入っている
それは明らかに自分のスマホでは無い為、直ぐにスマホを取って確認すると零の連絡先だけが入っていて
きっとあの時入れたのだろう
見たら返信するように送られていた。
まさかこんな事があると思わなくて、赤井さんで溢れていた気持ちにまた零が入り込んで。
自分が思うよりも複雑で、深い繋がりを感じた。