第10章 深い繋がり
普通なら大体、この感覚は相手を失うと言う意味だけを持つけれど
この世界ではいつ何が起こるか分からないし、赤井さんがこの先大きな任務に就く事があれば不安な日々が待っているし…
そんな少し非日常的な不安もあれば、“気持ち”と云う世界中に居る人間が持った共通する変えられないものも存在して。
一貫して見れば結局は“失う”という事だけど
起きるとはまだ決まった訳でも無いのに怯えてしまう。
「みなみ、どうかしたか?」
少しキョトンとしながら私を見る沖矢さんを見ると、安心感と共に不安も過って。
『いえ、何でもないです』
「何を考えていたんだ?」
誤魔化そうにも、きっと顔に出てしまっているのだろう…
さっきも言われたけどこの人に嘘は通用しない。
だけどこんな事を思っているなんて知られたら重いって嫌がられそうで。
ただでさえこの世界に来た理由がそんな感じなのに…
『先の事を、少し…』
「何が見えたんだ?」
『んー 不安、ですかね…』
「不安か。だがそれはあくまでもみなみの中での想像だろう?」
『はい』
「そうだな。常に最悪の状況を考えろとは言うが、それを俺達の未来にまで当て嵌める必要は無いぞ」
『赤井さん…』
「どうした。みなみは俺が離れて行くと思っているのか?」
改めてそうハッキリ言われると、きっと今までだったら素直になれなかっただろう。
だけど、せめて赤井さんの前ぐらいでは素直でいたくて
コクリとゆっくり頷いた。
『勿論、赤井さんの立場上とても心配なのもあります。だけど、それ以上に…』
「なんだ?」
『人の心はどうする事も出来ないので…』
やっと伝える事が出来れば、またフッと優しく笑って肩を抱き寄せてくれて。
「みなみは俺の事を“よく”知っているんだろう?改めてそう考えた上でも同じ気持ちか?」
赤井さん…
何度もあの画面を見つめる姿が思い浮かんで、他にも色々と。
彼の言いたい事が痛い程に伝わってくるとこんな事を思っていた自分が少し情けなくもなる。
『ごめんなさい…私、ちゃんと考えられてなかったです』
「伝わっていればそれで良いんだ」