第2章 はじまり
歩き回って疲れた体に冷たくて甘いココアが良く染み渡っていった
あまり見ないほうが良いのは分かってるんだけどね…
やっぱりつい見ちゃう。
サンドイッチを作っている安室さんの事を。
ここに安室透目当てで来る女性達はこの人が公安警察だなんて思いもしないんだろうなあ
全てを知っている自分はそんな人達よりも少し優越感の様なものを感じてしまったり…
「お待たせしました、ハムサンドです」
『わ、美味しそう…!』
10時半ぐらいにホテルを出て今は午後の15時前。
どれだけ歩いたんだって感じだけど、当然空腹にもなってたしそれが何度通り過ぎた事か…
それだけ米花町に夢中になっていた証拠だけども
美味しそうなハムサンドを前に声が勝手に出てしまった。
「そう言って貰えて何よりです。でも、確実に美味しいですよ?召し上がれ」
『いただきます』
一口頬張ると、シャキッとしたレタスに丁度良い塩気で少し脂の乗ったハムをコクのあるマヨネーズが塗られたフワフワのパンでサンドされていて…
美味しすぎる…!
大袈裟かもしれないけどこんなに美味しいサンドイッチを食べたのは始めてかもしれない。
「じゃあ僕も御一緒させて貰いますね」
いつぶりだろう、気持ちの籠った人の手作りの物を食べるのって。
ホテルの朝食も豪華だったけれど、この手作りのハムサンドが凄く心にも沁みてきて、何だか涙が出てきそうだった。
『えっ…』
「大丈夫…ですか?」
えっ?待ってなんでこの人も一緒に座って食べてるの?
私OKしたっけ?
…まあ、もういいや
『ええ、大丈夫です… こういう手作りの食べ物って凄く久々で…』
「そうだったんですね、貴女の久々に入る食事が僕の作ったこのハムサンドで嬉しいです。普段は忙しい方なんですか?」
優しい事言ってくれるなあなんて思ってたらやっぱり探りを入れてきたな
『はい、あまり自炊をする事が少なくて…』
一応嘘では無い。現実世界ではそうだったしね
「確かに自炊は大変ですが、外の食事ばかりだと体にも良くないですよ?特に貴女の様な美しい女性なら尚更です」
サラッとこういう事言えちゃうのも流石だなあ、バーボンになってる?
たとえ嘘だとしてもあの安室透に褒められた事は素直に嬉しかった
『…ですね、少しづつでも作るようにしますね』