第9章 本心は
『その…ずっと、大事…なの』
面と向かっては好きの二文字が言えなくて…
多分、いや確実に今度こそ本物の蛸みたいに顔が赤くなっている筈。
だからこそまた赤井さんの首に腕を回して、顔が見られないように肩に顎を乗せる。
『ん、好き…凄くね』
“好き”なんて言葉を異性に対して言うのは何時ぶりだろう。
漸く伝えられた言葉への返事は赤井さんらしくて
優しくフッと笑って背中に両手を回してくれた。
「ああ、俺もだ」
まるで夢でも見ているみたい。
静寂の中、赤井さんの腕に包まれていると午後の空を飛ぶ飛行機の音だけが聞こえてきて。
幸せでもあって平和でもあり、こんな時がずっと続いて欲しい。
ただ、赤井さんには…
自分が見ていた所までしか知らないから、赤井さんがその後どんな思いでどう過ごしていたかは分からない。
「ん?みなみ、どうかしたか?」
だけど同じ想いならきっと、前に進んだという事かな。
『えっ? いえ…何でもないです』
「…そうか」
赤井さんの返事はどこか悲しげで。
『どうか…したんですか?』
また赤井さんに目を合わせる
「本当は気にしているんだろ?」
『えっ?』
「俺に嘘は通用せんぞ」
『それは…』
赤井さんの言う“気にしている”と今自分が思っていた事は同じだと悟る
ある程度は知っているからこそ言えないのもあって…
また上手く赤井さんの目を見れなくなる
「ほら、こっちを見ろ」
ゆっくりと視線を戻せば真っ直ぐに私を見る赤井さんが居て。
「心配するな。お前以外興味は無い」
その言葉に安堵しつつ、少し複雑な気持ちもあったり。
悟られない様に微笑みかければ、赤井さんも微笑んでくれた