第9章 本心は
『赤井さん…色々、本当にごめんなさい…』
「良いんだ。俺こそすまんな」
優しく背中をトントンしてくれる赤井さんの手はやっぱり優しくて
涙はすっかり引いていた。
まだ沖矢さんのままだけど、しっかり赤井さんが伝わってきて。
『赤井さんは何も悪くないです。だから、さっきまでの事は忘れてください…』
「“忘れる”か。そいつはどうかな」
『あぁ…それは、えっと…』
「なんだ」
『えっと その、私の勘違い…だったから…色々』
「ホォ…ならば俺もみなみに対して何か勘違いをしているのか?」
『えっ?』
その言葉に釣られてまんまと赤井さんの肩に乗せていた顔を上げれば
少し口の端を上げながらフッと笑われて。
「どうなんだ?」
『そ、それは勘違いなんかじゃ、無いです』
「それなら安心だな」
『はい』
目を合わせて話すのが何だかまだ恥ずかしくってまた赤井さんの肩に顎を乗せようとすれば片手で両頬を掴まれて阻止される。
『ん、赤井しゃん…なんで…』
嫌でも蛸みたいにされるし多分赤井さんは笑いを堪えてる…
あの沖矢さんの性格でこんな事をされているみたいで不思議な感覚にもなる。
「まだみなみの返事を聞いていないぞ」
パッと手が放れる。
『ん それは…』
「ん?」
『…分かってるくせに…』
改めてそう聞かれると、いくら仮の姿といっても今は見た目以外赤井さんの状態だから恥ずかしくて目を合わせられなくなる。
今までの恋愛なんかとは確実に全てが段違いで。
あんなに好きだった人の事をの事を想って、想われて。
そして今は…
「分からんな。女の扱いには慣れていないものでな」
『うそだ…』
悪戯そうに笑う姿が変装マスクからも伝わってくるのが愛おしかったり。
「さあ、教えてくれないか」
『赤井さんと…同じです…ずっと』
「ホォ 何がずっとなんだ?」