第8章 小さな探偵さん達
秀吉さんについての事を話している姿は、沖矢昴の状態からでも分かるぐらい嬉しそうな、優しい感じで。
真純ちゃんも赤井さんの事を思っているし赤井さんも二人の事を大事に思っている。
そうやって思い合える家族は素敵なものだなと。
「みなみに兄弟は居るのか?」
『私は...居ないです。だから赤井さん達みたいに思い合えるのって素敵な家族だなって思って』
「そうか、だが向こう側にみなみの事を心配している人が居るのでは無いのか」
『どうかな。私多分死んだのかと...』
「何故そう思うんだ」
『じゃなきゃ突然別の世界に...って説明がつかないと言うか...それに...』
「どうした、言いたくなきゃ言わんで良いぞ」
『その、精神的にかなり...。もう何年も前からなので多分それで...』
「...そうか、そいつは辛かったな」
直前の鮮明な記憶は今も思い出せないけれど、やっぱりそうとしか思えなくて。
この世界に来てからはあの時みたいな感覚にはまだ陥ってない。
直ぐに治るものでは無いからこそ、またあんな風に落ちるのが怖い。
肩を抱き寄せてくれる手は、またあの時みたいに優しくて。
「話してくれて感謝する。今は大丈夫か?」
『はい、この世界に来てからはまだ一度も。赤井さんのお陰でもあります』
「それは嬉しいな、いつでもお前の力になる。何でも言え」
『ありがとうございます』
また赤井さんに助けられた気がする。
『そうだ!ちょっと遅めのお昼ご飯作りますか?』
「そいつは良いな、みなみの腕前を見たいしな」
『それは...』
静かな時間も好きだけど、ずっとこのままでは赤井さんもやりずらいかと思って...
エプロンを借りて二人でキッチンに並ぶだけで幸せな気分。
カレーライスを作る事に。