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猫の首に鈴をつける

第1章 狭い鳥籠


こんな事を1年もやられたキャットには同情を禁じ得ない。

「いないのか〜?エレノア嬢〜!」
『気持ち悪い。早く帰ってくれないかしら。王族に突き出してやりたい気分ね』
「営業妨害の届出を出したが、犯人が貴族と分かった瞬間に顔色変えて突き返してきたしな」
『逃げ場があるだけ十分でしょう。キャットの方のご令嬢をなんとかしなくちゃね。私の居場所を嗅ぎつけるまで時間はかかるだろうし』
「なんだ、助けてやるつもりなのか?」
『来ない方が楽でしょう。ならばもう来ない様にする対策が必要だわ』

私の所に来る物好きなおじ様は護衛をつけて来るから武力での抵抗が面倒だが、もしかしたらあのご令嬢はつけていない可能性もある。自分の役割を理解していない馬鹿女だからだ。貴族は貴族同士で結婚してそれぞれの家系の繁栄を目的とする。つまりは商業や政治的なコネクトに娘を使うのだ。大方家族の了承も得ずに独断で来ているのだろう。学がない証拠である。

「相当貴族が嫌いな様だな」
『貴方ならその理由がわかるでしょう?』
「ああ、分かるとも。痛いくらいにね」
『嫌いよ。貴族は。だから私も自分の事を手放しで好きになれない』
「つくづく面倒臭いな。我が愛子」
『もう。揶揄わないで。暗い話をして悪かったわ。それもこれもあのクソジジイのせいよ!』
「安心しろ。私はお前のことを手放しで愛している」

こういう事を恥ずかしげもなく言う。昔はいちいち照れていたものだが、何度も言われていると慣れてくる。でもロイファのおかげで最近は自分の事を好きになってきている様な気がする。

『はいはいどうもありがとう。私も愛してるわ。ロイファ』
「気持ちがこもってないが…まぁ良い。あいつも諦めて帰った様だ。荷造りを始めよう」

ロイファが立ち上がって茶器を片付け始めた。ロイファに任せて私は店に出て商品を箱詰めしていく。

「服と日用品は箱詰めしておく。お前は店の商品と商売道具を頼む」
『分かったわ』

色粉達を慎重に箱詰めしていく。ガラス製の瓶に入っているので衝撃で割れない様にクッション代わりの干し草を入れながら包んでいった。商売道具は重すぎて包めないのでそのまま店のレジ近くに移動させておく。

「私とお前のは分けて入れておいた。青が私、黒がお前だ」
『うん。ありがとう。箱詰めは私も終わったわ。明日はシルバーウェストル城に行くわよ』
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