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猫の首に鈴をつける

第2章 旅路


「結局、画材屋はやるのか?」
『キャットがあそこまで嬉しそうに使ってくれるなら、良いかもね。そのまま色粉の職人でも』
「本当は画材屋なぞやるつもりもなかった癖に、よく言うものだ」

見透かされたように言われて、やはりロイファは自分の事をよく知っているなと思った。反対に私は彼女の事を良く知っているだろうか。私は表面的な部分の彼女しか知らない気がする。

『ねぇ、ロイファは私から離れて自由に暮らしたいとは思わないの?』
「何だ。離れて欲しいのか?」
『そういうわけじゃなくて…その、ロイファが何をしたいのか知りたいの』
「私が?」
『そう。ロイファは私の事、よく知ってると思うけど、私はロイファの事をあまり知らない…だからロイファがこれから生きていく上での目標というか、何をしたら幸せなのかが知りたいの』

鳩が豆鉄砲をくらったように、ロイファが固まった。

「そうか。伝わっていなかったか」
『え、何?』
「私はお前と一緒にいる事が何よりの幸せだ。生涯、お前とその子孫を護るつもりでいる。これで私が何をしたくて、何をしたら幸せか分かったか?」
『わ、分かった…。分かったから!面と向かって言われたら照れるわ』
「お前から聞いたくせに」

確かにその通りではあるが、まさか私といる事だとは思っていなかった。ロイファは気持ちを伝えることに恥ずかしがらない性格だけど、その代わり自分を表に出さないから分かりにくかった。

「一丁前に他人を心配するようになったか」
『他人じゃないわ。私からしたらあなたは家族なの』

はっきりと、ロイファの目を見て行った。ロイファは違うと思っていても、私はロイファは家族だと思って接してきた。同じ日に生まれた筈だけど、何故か歳の離れたお姉さんのようで。

「家族か」
『私達にとって、家族というものはどうも悍ましく見えるけど、そうじゃない家族にも2人でならなれると思う』
「…そうだな。お前はそういう奴だ」

私は、あの家を否定する。否定しているからこそ、逸れものなのだ。

『あっ…見て、ロイファ。雪が止んできたわ』
「手合わせでもするか?」
『そうね。悪くないわ』

席を立ってキャットに声をかける。

『キャット。少し外にいます』
「おう。気を付けろよ」
『はい』

最近はあのクソジジイのせいで外に出るのも億劫だった。でも今なら自由に外でロイファと戦える。
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