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猫の首に鈴をつける

第1章 狭い鳥籠


「シルバーウェストル城?なぜだ」
『銀砂糖子爵にお店を閉める事を伝えないと。一応王国一の色粉職人として勲章貰ってるくらいだし』
「厄介なものだな」
『本当よ。こんなに表彰されるくらいだったらお店なんか開かなきゃ良かった。今となっては許可なく閉店も出来ないんだもの』
「なるほど、許可を貰いに行くのか」

本当のことを言うなら、許可を貰うのではなくぶんどるのだ。さもなくば営業妨害をなんとかしろとでも言うしかない。

『景気付けに今日はご馳走でも作っちゃう?暗い気分のまま明日お城に行ったら、貰えるものも貰えなくなっちゃいそうだから』
「悪くないな。何が食べたい?」
『そうだな…お肉が食べたいかも。お肉をたっぷり入れたシチューでも作らない?』
「腕によりをかけて作ってやる。お前は食器の準備をしていろ」
『えっいいよ!私も手伝う』
「迷惑な来客のせいで心労が増えただろう。ゆっくりしていろ」
『…ありがとう』

口調のせいで初対面では勘違いされやすいが、本当に優しい子なのだ。

「結婚する気はないとあれほど言っていたのに。まさかする事になるとはな」
『余程のことがない限りって言ったでしょう。余程のことが起きちゃったから仕方ないわ』

手際よくロイファが具材を切りながら、私にそう言った。昔、彼女に結婚するつもりはないと何度も言ったことが頭に残っているのだろう。

『でも悪い人じゃなさそうだわ。アンとシャル・フェン・シャル、それからミスリル・リッド・ポッドから聞いていたよりも怖くなかったし』
「キャットと呼ばれるのがよく分かる」
『もう。あんまり揶揄わないの』

テーブルに頬杖をつきながらロイファと会話を楽しんだ。良い匂いがしてきたらそろそろ料理が出来上がる合図なので、席を立って食器を用意する。

「ほら、できたぞ」
『ありがとう。さあ、食器の準備はしておいたから早く食べて寝ましょう。明日は早いからね』
「そんなに急がなくても良いだろう」
『ダメよ。銀砂糖子爵だって暇じゃないし、早めに行っておかないと、また明日来てくださいなんて言われたらたまったもんじゃないわ』
「せっかちなことだ」

そう呟いた後スープに口を付けた。ロイファの作るスープは優しい味がして好きだから、どれだけ食べても飽きない。

「お前はこの選択を後悔していないか?」
『そうね。今の所してないわ』
「なら良い」
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