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猫の首に鈴をつける

第2章 旅路


「本当に武力行使をするのであれば私の専売特許だがな」
「どういうことだ?」

疑わしそうにこちらに目を向ける。未だ作戦の内容が掴めないらしい。

『何も本当に彼女と刃を交えるつもりはありません。どうせ剣の持ち方も知らないでしょう』
「来たはいいが、このままだと私の出番はなさそうだな」
『平穏に解決できるだけ良いでしょう。ですが安心してください。作業場には絶対に入らせませんので』

いちいち聖エリスの実の粉を撒き散らして掃除していては時間がなくなってしまう。私のモットーは時は金なりなので、その損失が実に勿体ない。

「入らせないって…あいつ強行突破してくるぞ」
『だからそのための武力行使ですよ。簡単に言えば、武器をちらつかせて脅せば良いんです』

不安気にこちらを見てくるが、気持ちはよく分かる。この世界では護衛などの力仕事は大抵男がやるものだ。だから戦士妖精もゴツゴツして屈強な男に見える妖精が多い。

『どうせ護衛も付けずに、従者1人くらい連れて来てるのでしょう?簡単ですね』
「次護衛だの連れてきたらどうするつもりだ?」
『信じないとは思いますが…私達、武術の腕には自信があります。まぁそうでもなければ女2人でお店なんて舐められてやってられませんから』
「武術?武術なんてどこで…」
『偶々です』

戦いの技術はこの身に染みついて離れることはないが、どこで覚えたかを言うことはしたくなかった。その家を認める事になりそうで怖かった。

『そういえば、砂糖菓子制作の依頼は承っているのですか』
「花屋の娘から一件だ」
『納期は?』
「3日後」
『終わりそうですか?』
「邪魔が来なければな」

どうやら割とギリギリになる見込みなようだ。確かにいちいち令嬢が作業場に入ってきて聖エリスの実の粉を撒いては掃除してを繰り返したら時間も削れてしまう。私もおじ様が店に来ただけで聖エリスの粉を撒いては掃除していた。だからキャットの焦る気持ちもよく分かるつもりだ。

『大丈夫です。筋書き通りに事が運べば、少ない日数でこの件も解決する筈ですから』
「筋書き?」

キャットにも自分が考えている筋書きを全て話した。本当にそうなるかわからないからなんとも言えないと言う表情だったが、自分でこういう結末に持っていくしかないのだ。

『これが私の考えた筋書きです。きっとうまく行きます』
「そうか…?」
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