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猫の首に鈴をつける

第2章 旅路


自分の部屋に戻ってロイファと話した。商人のスイッチが入っている時はなるべく波風立てない様に振る舞うが、いざプライベートとなると私はそういうのは得意ではない。

『そうかな』
「問題ない。私がいる」
『ロイファがいつもそう言ってくれるから元気出てきた。頑張るよ』
「ああ」

男の人とひとつ屋根の下で不安ではないと言えば嘘になるが、キャットの事は信頼している。人と関わる仕事をしているのでなんとなく分かる。キャットは口が荒いだけで悪い人ではないのだ。

「飯できたぞ!」
『今行きます!』

荷解きしていた荷物をそのままにして一階へ降りた。

『ありがとうございます、ベンジャミン』
「い〜よぉ。料理は好きなんだぁ」
『ふふ、そうですね。確か前に会った時もそう聞きました』

席について作られた料理を見る。ダイニングが美味しそうな匂いで満たされていた。

「どうぞ食べてぇ〜」
『いただきます』
「いただこう」
「いただきます」

皆で手を合わせて食事に手を付けた。寒い中走ってきたので、温かいスープが身に沁みた。

「随分と早かったじゃねぇか」
『本当はウェストル中の砂糖菓子店に挨拶してこようかと思ったんですが、辞めました。そのせいで、早めの到着となってしまって…』
「挨拶?」
『はい。ウェストルのほとんどのお店に色粉を仕入れてますから…』
「お前…だからお金に困ってないって…」

確かに私の仕事については詳しく話していなかった。自分が色粉の職人であるということしか話していない。

『キャットには詳しく話していませんでしたね。私は王家から特別に勲章を授かった職人なんです。だから本当はお店を閉めるのにも許可がいるんです。銀砂糖子爵に会ってからそのまま此処にきました』
「お前…あのクソ野郎に会ったのかよ…」
『ええ。まぁお店を閉めるのにも銀砂糖子爵の許可がないとできませんから。その代わり、私の方の迷惑客の方は銀砂糖子爵がなんとかするでしょう』
「…そうかよ」

キャットはスプーンでスープを掬って口へと運んでいった。どこかその様子が重々しくて、自分の問題に相当頭を抱えている様だ。

『私の方は置いておいて…まずは貴方の問題を解決しましょうか』
「どうするつもりだ?何言ったって来るぞ」
『話してわからないなら、武力行使しかないですね』
「んな物騒な事できる訳ねぇだろが」
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