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猫の首に鈴をつける

第2章 旅路


何もかも追いつかないとでも言わんばかりに混乱している。朝の寝ぼけた頭では情報過多なのかもしれない。

『お互いの問題が解決すれば離婚するつもりです』
「偽装結婚か」
『貴方には伝えておいた方が良いかと思って伝えておきました。勿論他言無用でお願いします』
「それは構わないが…良いのか?」

聞き辛そうに私に尋ねてきた。躊躇が見てとれる。

『何故ですか?』
「普通愛のない結婚とか嫌がるものだろ、女性は」
『私が嫌がる様に見えます?』
「見えないな」

安心したのか、銀砂糖子爵は椅子にふんぞり返って天を仰いだ。朝っぱらから疲れさせる様な事をしたのは申し訳ない。

『では伝えましたので。これからキャットの家へ向かいます。何か私に要件があるならキャットの家へ届けて下さい』
「分かった。問題が解決したらそこへ文を届ける」
『ええ。あと、私のお店ですが、鍵は貴方に預けます』
「…責任をもって預かろう」
『何か…?』
「いや、随分とまあしっかりしてると思っただけだ。アンを見てるからな」

アンは確かに器用で容量が良いとは言えない。その代わり素直で真っ直ぐだ。そこがアンの良いところであり、足りないところはシャル・フェン・シャルやミスリル・リッド・ポッドが補っているのだろう。

『人は皆違って皆良いのです。比べるものではありません』
「まさか年下の少女に説教されるとは思ってもみなかった」
『貴方もまだまだという事ですよ。それでは失礼します』
「もう行くのか?」
『だってロイファがつまらなさそうですから』
「まぁ、今日のお前は若干弄れば楽しそうだがな。私も早起きさせられてあまり気力がない」
『だそうです』

本当に眠いのだろう。やる気が感じられない。

「今更言うことでもないが…まぁ、気をつけて行けよ」
『ええ。銀砂糖子爵もお元気で。吉報お待ちしております』

最後に忘れず釘を刺してシルバーウェストル城を出た。ロイファはやっと終わったと言わんばかりに伸びをしている。

『どこか寄り道して行きましょうか?』
「ちょうど良いところで昼飯が食べたい」
『そうね。そうしましょう』

ウェストルを出て、ルイストンへ向かうために南下する。この時期のウェストルは冬真っ只中でとても寒い。今年分の色粉はもう配達済みだから砂糖菓子店から苦情が来ることもない筈だと、言い聞かせる様に自分を安心させた。
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