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猫の首に鈴をつける

第2章 旅路


『ロイファは人をおちょくってないと死んじゃうものね』

そう言うと余計ぶすくれたのか、そっぽを向いてしまった。ロイファは銀砂糖子爵があまり好きではないらしい。

「何様だ」
『ウェストルに色粉の店を構えているエレノア・エインズワースとロイファ・バルト・フィルスです。銀砂糖子爵に至急お伝えしなくてはならないことがあって参りました』
「通れ」

門番の人に名前と要件を告げて中へと入る。まずは馬車を置いてから銀砂糖子爵へ謁見する事になるだろう。

「こっちだ」

衛兵に先導されてシルバーウェストル城へ。この反応からするに恐らく銀砂糖子爵はこの城にいると見ていい筈だ。衛兵から侍女にバトンタッチされて、城の中は妖精に案内してもらう事になった。

「こちらでお待ちください」
『はい』

客室に案内されて2人でソファーに座った。あまりに豪華すぎて落ち着かないが、上手く交渉するためには落ち着きが重要だ。焦っている事を相手に悟らせてはならない。

「待たせたな」
『お久しぶりです、銀砂糖子爵』
「なんだ。ロイファも一緒だったか」
「悪いか?」
「構わないさ。で、至急伝えたい要件とは何だ?」

挨拶も一瞬で終わり、仕事のスイッチに入った。此処からが勝負どころである。

『突然ですが、ウェストルにあるお店を閉店させていただきたくこうして参りました』
「なんだと?」

朝からとんでもない話題のせいで驚いたらしい。くしゃくしゃと頭を掻きむしっている。

「なぜ閉店を?」
『営業妨害です。毎日毎日迷惑な客でもない方がいらっしゃって商売できません。色粉を作る時間も削がれますし、他のお客様にも迷惑です』
「なるほどな」
『そして、こちらからの要件をお伝えします。私も別に閉店したくて閉店しているわけでは無いのです。その迷惑客さえなんとかしていただければお店は通常通り開きます。これでも王家から勲章を賜った色粉の職人ですからね』
「なるほど、分かった。どうにかしよう」
『それまで、私はアルフ・ヒングリーの家にお邪魔する事にします』
「お前達知り合いだったのか?」

急に怪しげにこちらを見る。確かに今まで関係がなかったので怪しまれても仕方はない。私も彼の事を最近知ったばかりだから。

『いえ、お互いの利害が一致したので一時的に結婚という形を取りました』
「結婚⁉︎」
『はい』

銀砂糖子爵は目を皿にした。
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