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猫の首に鈴をつける

第2章 旅路


朝は早かった。朝日が出ると同時に目覚めていそいそと着替え始める。ロイファも私が支度する音で目覚めた様だった。

「早いな」
『私だって本当ならこんな朝早く起きたくはないわよ。謁見受付が始まると同時に入りましょう』
「分かった。朝食は昨日の残りで構わないな?」
『ええ。早めに食べて、食器類も箱詰めして向かいましょう。此処が自分で建てた家だから大家とかに一々言わなくて良いのが幸いしたわね』
「良いのか?手放して」
『どうせ戻ってくるし、銀砂糖子爵に任せましょう。仕事を増やしちゃって申し訳ないけど、こっちも仕事がかかってるし』

いかに都合のいい様に銀砂糖子爵を動かせるかが鍵である。交渉は得意な方だ。そうでなくては商人などできやしない。

「もう未来が見えているのか」
『見えてるんじゃないわ。そうするのよ。自分でね』

折角お金を貯めて買った家なのだから、たかが1人の迷惑客のせいだけで手放すのは非合理的だ。勿論、商売をできなかった分の代償はきっちり払ってもらう。そうでなくては割に合わない。

『さ、行きましょう。それなりに小綺麗な服持ってて良かったわ』
「本当にせっかちなことだ。まるで冬眠前の子リスだな」
『もう…仕方ないじゃない。時は金なりって言うでしょう?時間を無駄にはしたくないの』

箱詰めしたものを取り敢えず馬車に詰め込んで、シルバーウェストル城へ向けて出発した。ロイファを隣に乗せて走り出す。シルバーウェストル城までの道のりは市場へ向かう人でごった返していた。

『流石、凄い人だかりね』
「今日1日の食事に必要なことだからな」
『そうよね…』
「緊張しているか?」
『そうね、少し』
「問題ない。私がいる」

いざとなれば交渉を肩代わりする気でいるのだろう。でも商人としてこれは自分でやらなきゃいけないことなのだ。他人に頼っている様では一流の商人とは言えない。

『大丈夫よ。銀砂糖子爵とは何回か会ってるし、多少融通のきく人物だと記憶してるわ。それに自分の事は自分でできる様にならないと』
「そうか」
『そうよ。だから見守ってて』

暗に手を出すなと伝えた。自分の仕事は自分でしなくてはならない。そう覚悟して家を飛び出したのだから、できなければ様はない。

『もうすぐね。シルバーウェストル城』
「あの銀砂糖子爵は食えん奴だ。面白くない」

ロイファが頬杖を吐きながら溢した。
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