第8章 リトルボーイ
起こしてしまった。
申し訳なく思いつつ、目をこする姿に胸がきゅうと鳴く。
上官だけど子供相手に敬語というのも話しづらいので、悩んでから、畏まらないことにした。
「おはよう、モブリット……くん。私はジェスだよ。ハンジさんからお世話を頼まれたの。よろしくね」
「ジェス……メガネの人が言ってた気がする。よろしくね」
ふにゃりと笑った顔に叫びたくなってしまって口を引き結んで我慢した。
なにこれ!!!!かわいすぎでしょ!!!!
一介の兵士の部屋に子供が喜びそうな物なんてあるはずもなくて、退屈そうに窓の外を見ていたモブリットくんにどうしたら楽しんでもらえるだろうと考える。
ぱっと閃く。あるじゃないか、私の部屋でもある遊び道具。
引き出しから一冊のスケッチブックと黒鉛を布で包んだ物を取り出す。ハンジ班では巨人の研究にあたってスケッチをする事が多いので、切らさないように常にストックしていた。
彼の正面に座って一式を差し出すと、ぱあっと明るくなったので胸を撫でおろす。飴とか、お菓子とかあったらよかったんだけどな。守りたい、この笑顔。
「おねえちゃんも一緒にかこうよ」
「え、いや…お姉ちゃんは…」
「だめ?」
アッやめて!そんな目で…キラキラした視線を送られたら断るなんてできなくなるから!!なんでもしてあげたくなってしまう!!
「へたくそでもよければ…」
「やったあ!」
ちっとも上達しない絵の腕を、こんなにも憎んだことは無い。