第6章 -平和世界if- 幸福のあしおと
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「ジェスさん!肉!肉が切れました!」
「ありがとう、サシャ。すぐ作っちゃうからね」
「カレー!カレー!」
調査兵団の兵士ではなくなっても、いつまでもサシャはサシャなんだなぁと顔がほころぶ。
ここからは少し大仕事。
大量に刻んだ野菜と牛肉を寸胴で炒め、火が通ってきたら水を入れ中火でぐらぐら煮込む。
火を止めたら市販のルーを大きなスプーンを使って溶かして、とろみがつくまで弱火でさらに数分煮込む。
そこへ隠し味に安売りされていたビターチョコレートを一欠片ずつ加え風味とコクを出す。
「まだですかー?!!」
「味見してもらっていい?」
「はいぃ!」
傍で飛んだり跳ねたり、鍋の中の匂いを嗅いだりしていた彼女に少しよそった小皿を渡す。目を血走らせてずずずっと一気飲み。食が関わると顔のデッサンが狂うサシャにもだいぶ慣れてきた。
「ゥンまあ~いっ!!チョコの風味が甘口なカレーの風味をより引き立たせ、まるで食材たちのロンドを「はいはい。ご飯にしましょうね」うぇえ?いいところだったのに」
まだ食レポを続けたさそうなサシャをテーブルに座らせ、カレーライスをよそった大皿を彼女の前に出す。自分の分は少なめにして、サシャの横の席に並べる。
それとほぼ同時に息を切らした夫が帰ってきた。
「ただいま!」
「おかえりなさい、モブリット」
「お疲れ様ですモブリットさん!」
「ありがとうサシャ。…今日はカレーか…!」
「ええ。大盛りよね?」
「もちろんだ」
部屋の中に漂う香辛料の香りに気づいたモブリットがぱぁあと満面の笑顔になる。初めてマーレで食べた時と同じ顔ね。かわいい。