第6章 -平和世界if- 幸福のあしおと
「モブリット。私がハンジを捕まえておくから今日はもう帰りなさい」
「しかし…」
「いいんだ。奥さんが待っているだろう?」
モブリットさんの左手の薬指がキラリと光る。
ウォールマリア最終奪還作戦のあの日、ベルトルトとマーレ軍を説得できたその帰りにすぐ、彼は恋人にプロポーズをしたそうだ。
モブリットさんの顔が赤くなる。
「エルヴィン団長ぉ…優しすぎます!」
「それと、もう私は団長ではないからな。そんな呼び方はしなくていいぞ」
「はい!エルヴィン首相!!ではお言葉に甘えさせて頂きます!」
エルヴィン団…首相に引き継ぎをしたモブリットさんは、ぺこぺこと頭を下げながら部屋を出る。
僕も早く呼び方に慣れないとなぁ。
「ふふ…全く。いい世界になったものだな」
左手に握っていたペンを置いて、ふとエルヴィン首相がそんなことを言った。
「本当ですね」
調査兵団団長として険しい顔をすることの多かった彼の、ふわりとした幸せそうな笑顔に僕も釣られて笑った。