第5章 ■香水
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残った理性でなんとか彼女に問いかける。抱いても良いかと。
私の思惑としては、ドン引きしたジェスが呆れて立ち去ってくれることを期待していたのだが。
顔を真っ赤にしたジェスは予想に反してコクコクと何度も頷いた。
これはどういうことなのだろうか。
いくら彼女が優しいからと言って、勃起した上司の性処理のために快く引受けたというには無理がある…。それとも、断りきれずに?……だめだ、頭がボーッとして考えがまとまらない。
いや、今はそんなこと考えなくてもいい。
とにかくすぐにでも彼女にキスをしたかった。
考えることをやめ本能だけで動いている私にジェスが一生懸命応じてくれている。その健気な態度に胸の奥がぎゅっと締め付けられる。思わず彼女の頭に手を回し、貪るようなキスをしてしまう。驚いたようだが拒絶されなかったので、満足するまで口内を犯した。
口を離すとお互いの舌に銀糸が張った。
プツンとそれが切れると視線が無意識に彼女の顔へ向く。眉を八の字にして、薄く涙の膜がある目元にどうしようもなく煽られる。これ以上欲情することなんてできないはずなのに、性欲が留まるところを知らない。
頭に回した手でそっと誘導するようにジェスをベッドに寝かせる。
寝転がったことで強調された胸元に触れると、彼女の体がぴくりと跳ねた。
最初は手の甲で撫でたり、軽く揺らしたり、たまに乳首らしき所を優しく弾いたりして、男には無い感触を堪能した。次にブラウスのボタンをひとつずつ外し、彼女の肌を露わにする。はたと、あるべきものがないことに気づく。
「下着は?」
「ふ、風呂上がりは、汗がすごくて……」
「ここに来るまで男に会ったか?」
「いえ!今日はたまたま、遅い時間に夕食を食べたので。そこからは女性にしか会ってません」
「……そうか」
こんな問答に意味があるのかわからないが、彼女から弁明を聞くまで心の中に蠢いていた黒い何かが溶けていくのがわかる。それでもこんな無防備な姿でウロウロしてたのだと考えると無性に腹が立つ。そんな事をしたらどうなるか、多少はわからせて危機感を持たせてやりたい。
……恋人でもない私がそんな感情を持ったってしょうがないのに。今日の私は本当にどうかしている。