第5章 ■香水
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苦しいくらいに抱き寄せられて思わず蛙みたいな声が出る。もうちょっと可愛い声をだしたかった。
モブリットさんの顔が私の左肩に埋められて、私も全く同じ状態になる。わ、汗の匂いもするのになんだか……男らしくていい香りがする。
モブリットさんも私のにおいを嗅いでいるらしく、耳元に何度も息がかかり、くすぐったいやら恥ずかしいやらで頭が爆発しそうだった。
…けれどそれよりもっと大変なのは、お腹に当たっている硬いヤツだ。
男の人の性器を見たことも触ったことも無かった私は、はじめベルトかなにかの金具が当たってしまっているのかと思っていた。
しかし、位置的にも、微妙に残る肉っぽい柔らかさにも、特徴的な形にも色々と察してしまい、自分に欲情してくれてるんだという事実に喜びのあまり震えが止まらなかった。
「モブリットさん……?」
さすがに肺が圧迫されすぎてきたので、副長の名前を呼んで様子を伺う。すると腕の力が緩み、鼻と鼻がぶつかりそうな距離ではあったが目を合わせられるようになった。
ぴったりとくっついた私の胸から、副長の胸板へ心臓の音が伝わってしまうんじゃないかと怯んだけれど、副長のじっとりとした目線に射抜かれてしまい腰が碎ける。
「……………………ジェス。」
「……………はい」
たっぷりの間を置いて艶のある声で呼ばれる。
「抱いてもいいか?」
「……」
少しかすれた低音が鼓膜を震わせると、私は副長の言う事に逆らえなくなってしまった。緊張した顔でコクコクと何度も頷く。
ドクドクと心臓が早鐘を打ち始める。状況は掴めなかったけれど…男の人とえっちしたこともなかったけれど…今の私はすごく下腹部がキュンキュンとして、目の前の男の人に抱かれることばかりを考えていた。
普段の優しい表情からは想像もできない、悪巧みをする人のにんまりとした笑顔にやられて、下半身が切なくなる。
私、これから好きな人に抱かれるんだ……。
キスも手を繋ぐことすらしたこともなかったのに。
モブリットさんと舌を絡め合うと脳が痺れ、全身の力が抜け、こんな風になることを始めから知っていたように体が敏感に反応し、次々と与えられる刺激に体がとろけそうになるのだった。