第3章 My Honey
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ジェスが私の元へ来なくなって十年以上経った。
初めは"そんな日もある"程度に考えていたがそういう日が何日も続くうちに、私たちの関係に終わりが来た事を悟った。
まだ若かった頃の私は、泣いているジェスを放って置くことが出来ずに、けれど何もかも失って心を壊された彼女になんと言ったら良いかわからず身体を重ねることで慰めてしまった。
自分の行動が正しいかもわからずに続いていた不毛な関係。すでに私のことを好いていなくとも、彼女のことを離したくなかったから、私はそれ以上は望まずに現状維持に努めていた。
何も言わずに去ってしまった彼女は、どんな事を考えていたんだろう。
会話が減り、会っている時間は嬌声しかあげなくなった彼女の本意を想像したところで、本当のことは永遠に分からずじまいで後悔の念が募るばかりだ。あの時、泣いた彼女を別の方法で救うことが出来ていれば今が変わっていたのだろうか。
両思いだった女を奪われたことや、彼女の母親とその絆を利用して弄んだ男のことは一生許せない。しかし怒りに身を任せて復讐をするほど冷静さを欠くわけでもない。
どうにもできない現状にただだだ時間だけが過ぎていって、一人前の兵士になる頃には彼女の記憶を封印するように仕事に打ち込む毎日を過ごしていた。