• テキストサイズ

【短編集】海を見に行こう

第3章 My Honey



それから私達は秘密の関係で結ばれた。
ウォールシーナに幽閉される私と、方やウォールローゼの調査兵団本部に暮らすモブリットだったから、会う機会は全然無かったけれど、調査兵団へ視察に行く日は必ず彼の元へ行って身体を繋いだ。
彼と過ごす時間はあっという間で、でもその時間だけが私の荒んだ身も心も癒した。
ずっとこのままでいたいと言う私にモブリットは何も言わずに悲しそうな顔をしていた。

そんな時間が過ぎて数週間が経過した。

ある日、いつものように食事をしている最中、経験したこともないような吐き気に見舞われてトイレの中に籠った。とにかく食べ物のにおいを嗅ぎたくなくて嗅ぐと気分が悪くなってまたトイレへ走った。
何かしていても眠くなって、かと思えば頭痛がしてイライラする日が増えた。

様子のおかしい私を心配した侍女が、ウォールマリアに住んでいるという腕の良い医者を呼んだ。
黒髪の長髪で、丸い眼鏡をかけた男の医者で、彼は自らをグリシャ・イェーガーだと名乗った。
それにすら腹が立った私は彼を跳ね除けたが、彼は私をすばやく診察すると「おめでとうございます」と笑ったのだった。

妊娠3ヶ月。
私は子どもを身ごもっていた。

絶望した。なぜなら、モブリットと最後に会った日から数日は生理が来ていて、終わったあと最初にセックスをした相手が夫だったからだ。
私の中にいるのはあの男の子供なのだ。
それからグリシャは私の専門医になり、私の経過を観察した。確かに彼は名医で私を的確に処置してくれ、相談にも快く乗ってくれていた。

彼になら話してもいいと思った私はモブリットとの関係を名前を伏せながら話し、お腹の中の子供が憎い夫との子で、最愛の人は夫でも子供でもなく彼であること、産まれてくる子を愛する自信が無いことを打ち明けた。

グリシャは私を咎めるでもなく、遠い目をしながら言った。

「あなたにとって愛するのは確かに難しいかもしれないですね。でも、あなたがこの子を愛さなければ、誰もこの子を愛さない。愛されなければ愛を知ることも愛を与えることも出来なくなる。そんな子供を見て後悔するのはきっと…親である自分なんです」

前に息子がいると話していた幸せそうな彼が、そんな話をするのを不思議に思う。
けれど妙に納得してしまった私は、膨らんできた腹の中で鼓動する小さな命を優しく撫でたのだった。
/ 158ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp