第3章 My Honey
今回は調査兵団の団長が12代目に変わったということで、その実情を調査するために連れ出された。
新たに団長となったキースシャーディスという男は熱血漢であるために、金による買収ができず今まで通り都合よく操ることが出来なくなったと聞かされている。
自分たちの目の届かないところで問題が起これば責任を取らせるのは私たち一族であるため、誰でもいいからパイプとなって兵団内の情報をくれる兵士を探して欲しいと抱かれている時に話されていた。
夫が団長に兵舎内を案内され、新兵たちの訓練の様子を視察しているうちにこっそり抜け出す。
私がちゃんとやらなければ、暴力を振るわれるのは母だった。地獄のような日々の中で、唯一の希望である母を守るためにもやる事をやっている素振りだけでも取らなくては行けない。
スカートの上から、ポケットに入れている母からの手紙を触る。私が守るからね。
「ジェス…?」
「っ!」
石造りの廊下を宛もなく歩いていると聞き覚えのある、でも声変わりをして低くなった声で名前を呼ばれる。
ずっと会いたかったけど、今は会いたくない彼に出くわしてしまい、しまったと思った。
彼に会ってしまったら、なにもかも話してしまいそうで。巻き込みたくなくて見かけても隠れるようにしていたのに。だめだ、振り向いたら。また泣いてしまう。
「ジェス!」
「さわらないで!」
大きな手で肩を捕まれその手を振り払う。嬉しいのに胸の中は悲しさでいっぱいだった。
「ジェス……」
「……」
「……結婚したんだって?」
「…………」
無言で頷く。
「………………そうか。どうだ?結婚生活は」
「……順調」
「そっか。……なあ、ジェス。……お前の母さんが、流行病で死んだのは知ってたか?」
「?!」
堪えていた涙が流れそうになる。
逸らしていた顔を彼に__モブリットに向けると、彼も似たような顔をしていた。
「なんで、だって、手紙!」
慌ててポケットの中を出して昨日まで会話していた内容を見返す。そして気付いた。気づいてしまった。
筆跡が違う。