第3章 My Honey
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人を使った伝達手段では環境の変化によっていとも簡単に陣形が乱れ、生まれた作戦の穴に巨人が攻め入ってくる。
私は遊撃班の副長として陣形全体を巡回しつつ巨人の掃討に当たっていたが、どんなに急いでも間に合わないことはあって。右翼後方を索敵していたクライス班とウィル班がいなくなったと伝令を受けてからすぐに巨大樹の森の入口へ馬を走らせたのに、結局助けられたのは新兵一人だけだった。もっとも、酷い時は新兵でさえ助けられないこともあるのだから、1人でも多くの命を救えたことを喜ぶべきなのだろう。
…しかし、一緒に酒盛りをしてくだらない話をし合ったみんなの顔が浮かぶとそう簡単にこの憎しみを置いておくことなんて出来なかった。
怒りに任せて巨人を一匹残らず駆除した後、茫然自失となった新兵を死んだ部下の馬に無理やり乗せ、医療班の元へと送り届ける。意識は(一応)ありそうなものだが相当頭を切って出血しているようだし彼はこのまま負傷兵として荷馬車で運んでもらった方がいいだろう。
「ハンジ副長!今度は左翼に巨人が集中しているようです!急ぎ援護を!」
「わかった!すみませんが、よろしくお願いします」
彼はダメかもな。
初陣で先輩方が全滅して、自責の念やトラウマのせいで兵士を辞めるのは珍しいことでは無い。
これを苦に退団したとしても仕方の無いことだと思う。仲間の死に何も思わない方が異常だから。
それでも、食堂の片隅で同期に「壁外調査で外に出たら、故郷に待っている幼なじみに花を持って帰るんだ」と目を輝かせていた彼の心が挫けてしまうのを悔しく思った。
全ては巨人のせいだ。
左翼側に馬を走らせ、巨人に襲われている分隊を発見次第巨人を始末していく。
いつか必ず、私がこの手で巨人をすべて殺してやる……!