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【短編集】海を見に行こう

第3章 My Honey





訓練兵の解散式後は配属手続きや本部への入寮などで慌ただしい日々を過ごし、気付いた時には初めての壁外調査へ向かう日になっていた。
ウォールマリア最南端、シガンシナ区の門の前で、馬に乗った私はバクバクと脈打つ心臓を押さえながら、開門のときを今か今かと待ち侘びていた。

夢にまで見た外の世界。

訓練の中で死ぬかもしれないと思うことは何度もあったし、心が折れそうになることも沢山あったけれど、目の前に壁のない世界が広がっているのかと考えると全てがこの時のためだったのだと心の底から思うことが出来た。

「バーナー。大丈夫そうか?」

新兵の私を心配したのか、所属する班の分隊長_ウィルさんが小声で様子を伺ってくれた。

「大丈夫です。ちょっと作戦を復習してたので」
「さすが、成績優秀生だ。不備は無さそうか」
「はい。本日は壁外調査の新たな拠点設置と、それに伴う巨人の掃討。不測の事態があれば班の伝達係に情報共有…ですよね」
「その通り。ま、初めはだれでも小便チビるくれぇ緊張すんのが普通だ。お前は運良く、歴戦の先輩がいる俺の班唯一の新兵になったんだ。大舟に乗ったつもりでいてくれよ」
「頼もしいです。お気遣い感謝いたします」

分隊長の小声が班の先輩方にも聞こえていたのか、皆が優しく微笑んで私を見ていた。
手綱を握りしめていた力が少し緩む。

そうだ、分隊長の言う通りだ。
考えすぎたってやることは変わらないんだ。私は自分の出来ることを精一杯やろう。

開門を知らせる鐘の音が響き渡る。
副団長の鼓舞に兵団全体の士気が上がり、みな拳を空に掲げると同時にゆっくりと門が開いていった。

「行くぞぉおおおお!!!」

団長の雄叫びと共に全分隊の馬が走り出す。


あんなに高かった壁を呆気なく潜ると、広がる朝空の大きさに感動する。

ふと、故郷の花畑でいつも寝ていた幼い頃のジェスを思い出す。
彼女はいつもこんな空を見上げていたんだろうか。

帰ったら壁の外がどんなに美しかったか私の知りうる限りの言葉で話尽くそう。そして、摘んだ花を渡して3年越しの約束を果たすんだ。
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