第12章 ▲紫苑
「いや!いやいやいやいや!!!いやだぁあ!!」
右手に女性を、左手に俺を鷲掴みにした奇行種は、女性の頭にかぶりついた。
泣き喚き、暴れていた体がパキパキと捕食され、支えをなくした糸人形のようにだらりと力が抜ける。
自分もああなるんだろうか。
ボリボリと骨も残さず消えてしまった女性にぼんやりそんなことを思った。
掴まれた拍子に脳震盪でも起こしたんだろうか。
食われて死にそうだって言うのに、頭は冷静に状況を分析していた。
あの時、焦らずまずは腕を削いでしまうべきだった。そうすれば彼女もまだ、逃げるくらいはできたかもしれない。
大きく開けられた口の中には隊服の端切れや、血塗れの肉片があった。
それを見て思ったのはひとつの感情だ。
悔しい。
あんなに分隊長に殺されそうになるくらい訓練したのに、自分の命があっという間に食い尽くされてしまうのかと思うと噛み砕いてしまうくらいに歯を食いしばった。
こんな所を分隊長に見られたら、また怒鳴られながら殴られるんだろうな。