第12章 ▲紫苑
訓練後、汗や泥まみれになった顔や手を洗おうと水飲み場へ向かった。
「…バーナーか」
「ぶ、分隊長」
思わぬ先客に緊張して敬礼する。
「ふっ…そこまで畏まらなくていい」
「い、いいえ。そういう訳には」
「そうか」
綺麗な顔で微笑まれ胸が高鳴る。
上官に何を考えてるんだと、かぶりを振った。
「いよいよ1週間後か。
…今回の壁外調査で生きてる保証がないから言っておくが、ここまで着いてきてくれたバーナーには本当に感謝している。最初の頃よりいい顔つきだ」
「えっ」
思いもよらなかった激励に心がむず痒くなる。
分隊長程の人が自信なさげにしているのが不思議ではあったが、この雰囲気なら、いつもは言えないことも言えてしまう気がした。
「…分隊長、あの時はすみませんでした……。失礼なことを言ってしまって」
「……あの時のことか。気にもしてなかったよ。君があぁ思うのは当然のことだからな」
「……今では分隊長が言っていたことを理解できます」
「立体機動の動きが良くなったからな。これで壁外でも生き残れるだろう。……その優しい心を完全に捨てされればな」
トン、と人差し指で心臓の当たりを突かれ、そんなに力を入れられていなかったのに後ろによろけてしまった。
「それはどういう…」
「1週間後にわかるよ」
見た事のない優しい顔で分隊長は行ってしまった。
厳しかった態度から一変、ついに自分の実力をを認めてもらうことが出来た。
その事に足の先から頭まで、ビリビリと興奮が伝わって武者震いをする。
「よしっ…!!」
マメだらけで固くなった拳を握りしめ、ぐっと背を丸めた。