第12章 ▲紫苑
壁外調査まで1週間を切った。
相変わらず訓練では血反吐を吐くほど扱かれ続けている。表現ではなく本当に吐いたこともある。
しかし、最近立体機動で分隊長が言っていることを理解できるようになってきた。
今までの自分はガスの量で推進力を補っていたのだが、それでは持久戦を求められる壁外では早く機動力を失ってしまう。
遠心力を利用するということは、アンカーをできるだけ遠くの物体に刺し、ベルトにかける体重をより緻密に操作せよということだったのだ。
不本意だが、言葉で覚えさせられるよりも体で覚えた方が実践向きであることにも気付いてしまった。
その証拠に、訓練で分隊長が自分を殴る回数が明らかに減っていた。
あの一件で気まずさから会話が減っていたという可能性も考えられたが。
「だいぶ動きが良くなってきたなモブリット」
「そうでしょうか…」
「自信持ちなよ。分隊長も褒めたそうな顔してるもん」
「ええそんなまさか」
先輩方が両脇に飛んできて、立体機動で空を舞いながら会話する。
地上で腕を組みこちらを見上げる分隊長の表情はいつも通りの顰め面だった。