第9章 モブリット生誕記念『今日の主役』
嬉しくもあるけど、恥ずかしくもある沈黙に耐えられなくなって背中に隠していた包みを取りだし、モブリットさんに差し出した。
「わ、私からのプレゼントです。…お気に召すか自信はないんですが」
手からプレゼントの重みが無くなったのを感じ、カサカサと包装が開けられる音がする。
心臓が過去1番早鐘を打ち始めた。
エルヴィン団長と買い出しに行った時に買ったものだけど、実は団長が選んでくれた物の中から選んだ物ではない。
選んでもらって本当に申し訳なかったけれど、レジの横で見つけてしまったこれを、モブリットさんにどうしてもプレゼントしたくなってしまったのだ。
「これは……」
「シャツです。すごくいい生地だったみたいで、これだ!って気持ちが止まらなくて……」
私が選んだのは着心地の良さそうなシックなシャツだ。なんの素材なのかわからないが、限られた土地で衣類の材料も作り手も少ない中、こんなに良いシャツが手に入ったのは奇跡だった。
度重なる戦闘で兵士にとって衣類は消耗品。特に支給される隊服一式に含まれない上衣は。
物価が高いこともあって丈夫な服さえ滅多に手に入らない。だからみんな服を大事にするし、ストックを沢山持っている。数を重視するため素材の質にこだわれないのは最早当たり前となっていた。