第9章 モブリット生誕記念『今日の主役』
エルヴィン団長は気にする素振りもなく、料理に手をつけている。私はその様子を固唾を飲んで見守った。
「どう、でしょうか……」
「……」
フォークを口に運んでから動きの止まった団長に嫌な汗が出てくる。なにか手順を間違えただろうか?!
「う……う……」
「エルヴィン団長……??」
「うまい!!」
「?!!!」
目をカッと見開いてガツガツ食べ始めた団長に驚く。こんな大声聞いたことがない。
「私にも食べさせてください!!」
「おいサシャ、ずりーぞ!!」
「俺も!」
「私も!!」
周りにいた104期のみんなや兵士たちがエルヴィン団長のように手に持っていたシルバーで料理に手を付け始めたので、私は人の波に押しつぶされないようにそこから離脱する。
お母さんの付き添いでバーゲンセールに言った時のような人混みに嫌な記憶が蘇る。
いつも優しいお母さんの鬼気迫る表情は子供なりにトラウマだった。みんな同じ顔をしている……。特にサシャは……。
結局エルヴィン団長へのお礼にと作った料理たちは、殆どサシャや他の人に食べられてしまい、ものの数分で無くなってしまった。すみません、団長……。
満足そうにしていたみんなに感想を聞くと間髪入れず「うまかった!!また作ってくれ!」と迫られて、ひとまず料理の問題はなさそうだと計画書にチェックを入れた。
今のうちにもう一度買い出しに行った方がいいかもしれない。誕生日会ではここに居るみんなでモブリットさんを祝うのだから……。