第5章 医者と患者と約束
新一
「それってどういう…」
医者
「新一君。」
新一
「はい?」
医者
「念の為カーテンを閉めてくれるかい?」
新一
「!はい。」
個室だが一応カーテンを閉めた。いきなり人が来ないとは限らないだろう。
朔哉
「絶対だからな…。約束を破ればいくら新ちゃんが一緒だろうが病院には2度と来ない。」
新一
「朔哉…。」
医者
「分かった。約束だ。」
指切りを交わし一呼吸おく朔哉。
スルッ
新一・医者
「!!!」
朔哉
「…見せ物じゃねぇ。早く済ませろ。」
医者
「!すまない。」
聴診器を当て心音を聞いていく医者。
だがその表情はどこか悲しそうだった。
朔哉の背中に刻まれた痛々しい無数の傷痕…。
背中の中央にある大きな傷を始め煙草の火を押し付けられたような痕もあった。
確かにそれは暗い場所では分かりにくい物だった。
しかしこれだけははっきりと分かる。
ここ最近出来た傷痕だ…。
医者
「ありがとう。」
朔哉
「…礼を言われる覚えはない。」
新一
「……。」
医者
「朔哉君。今日は点滴が終われば帰ってもいい。
でも、診察日には必ず来てくれ。どうしても来れない時は連絡をくれれば別な日にするから。いいかな?」
朔哉
「あぁ。約束だな…?」
医者
「約束だ。」
新一
「俺は保護者で保証人って事か?」
朔哉
「新ちゃんと一緒じゃなきゃ通院なんかするかよ…。」
新一
「ったく手のかかる弟だな。」
朔哉
「それだけ信頼されてるって事だろ?」
医者
「私も朔哉君にそれだけ信頼されたいものだ。」
朔哉
「『約束』守ればいいだけだろ?」
医者
「そうだね。それじゃこの辺で失礼するよ。」
朔哉
「…ありがとう。」
新一・医者
「!」
医者
「どういたしまして。」
そう言い残し部屋を後にした医者。