第5章 医者と患者と約束
ー朔哉病室ー
医者
「目が覚めたかい?」
そう声をかけて来た者はまだ若い感じの医者だった。
名札を見たがはっきりとは見えなかった。
朔哉
「はい…。」
医者
「今からいくつか質問する事に正直に答えてくれるかい?」
朔哉
「……。」
医者
「もちろん無理に答えなくてもいい。」
朔哉
「分かりました…。」
医者
「最後に何を食べたか教えてくれるかい?」
朔哉
「学校で新ちゃんとパンを少しだけ…。」
新一
「……。」
(そういや、こいつあんまり食べてなかったな?)
医者
「新ちゃん?」
新一
「あぁ、僕の事です。」
医者
「仲が良いんだね?」
朔哉
「新ちゃんは…兄弟…だから…。」
医者
「では学校でパンを少し食べただけなんですね?」
朔哉
「最近あまり食欲無くて…。」
医者
「今も食欲は無い?」
朔哉
「…はい。」
医者
「……。では胸の音を聞かせてくれますか?」
朔哉
「!……っ…。」
新一
「嫌…なのか?」
朔哉
「ごめん…。それは出来ない。」
新一
「でもさっきは体拭いたじゃねぇか?」
朔哉
「それは…。」
よく見ると朔哉の体が小刻みに震えていた。
新一
「…ごめん。悪かったな。」
(何かに怯えている…?でも何に?)
新一が医者に首を横にふり合図を送るとそれを理解したようで、
医者
「朔哉君。」
朔哉
「………。」
医者
「無理をさせてすまない。気が向いたらまた呼んでくれるかな?」
朔哉
「………。」
ポンっと手を頭に乗せ立ち去ろうとした時だった。
朔哉
「誰にも言わないと約束…出来るか?」